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暗号資産の税金と確定申告|雑所得の計算と2026年度税制改正

この記事は2026年7月時点の公表情報にもとづく一般的な解説で、税務相談ではありません。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。制度は改正の途中にあり、以下の「これから変わること」も現時点では決定した制度ではありません。一次情報は国税庁のタックスアンサー No.1524および「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」です。

結論から:いまの日本の扱い

2026年7月時点で、個人が暗号資産の取引で得た利益は原則として雑所得に区分され、総合課税の対象になります。給与などほかの所得と合算した金額に対して所得税5〜45%の累進税率がかかり、これに住民税約10%が加わるため、所得が大きい人では合計約55%に達します。

株式や投資信託の売却益が申告分離課税で一律20.315%であることと比べると、同じ「値上がり益」でも扱いがまったく違います。この差が長く議論されてきた結果が、後述する2026年度税制改正大綱です。

どの時点で課税されるのか(ここを間違える人が多い)

「日本円に換えていないから関係ない」という誤解が最も多く、そして最も高くつきます。次のいずれも、その時点で利益が確定したものとして扱われます。

  • 売却|暗号資産を日本円に換えたとき。
  • 暗号資産どうしの交換|ビットコインでイーサリアムを買ったときなど。円に換えていなくても、売却して買い直したものとして計算します。アルトコインを何度も乗り換えた人が、年末に円残高はほとんど増えていないのに大きな課税所得を抱えているのはこのためです。
  • 商品やサービスの購入|暗号資産で決済したとき。
  • マイニング・ステーキング・レンディングなどの報酬取得|受け取った時点の時価が収入になります。

逆に、買って持っているだけ、含み益があるだけでは課税されません。国内取引所から自分のウォレットへ移すだけの送付も、それ自体は課税対象ではありません(送付手数料の扱いは別途整理が必要です)。

計算方法

基本は「売却額 −(取得価額 + 必要経費)」です。同じ銘柄を複数回に分けて買っている場合、取得価額は総平均法で計算します(届出をすれば移動平均法も選べますが、いったん選ぶと継続適用が原則です)。

年に数回の売買なら手計算でも足りますが、次のどれかに当てはまる人は損益計算ツールを使ったほうが確実です。

  • 複数の取引所を使っている
  • 暗号資産どうしの交換を何度もしている
  • DeFi、ステーキング、エアドロップを含む
  • 海外取引所や自己管理ウォレットを使っている

国内取引所は年間取引報告書を発行しており、これを使えば計算はかなり楽になります。海外取引所を使っている場合は、CSVを自分で取得して突き合わせる作業が必要です。

会社員の「20万円ルール」の正しい理解

給与を1か所から受けている給与所得者で、給与以外の所得の合計が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要です。よく「20万円までは無税」と説明されますが、これは正確ではありません。

  • 住民税の申告は必要です。所得税の申告が不要であることと、住民税の申告が不要であることは別です。20万円以下でも市区町村への申告義務は残ります。
  • 医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)などで確定申告をするなら、暗号資産の利益も金額にかかわらず申告に含めます。「申告するなら全部書く」が原則です。
  • 20万円は利益(所得)の額です。売却総額ではありません。

雑所得であることのつらい点

税率の高さ以上に効いてくるのが、次の2つです。

  • 損失を給与や株式の利益と相殺できない|雑所得内では相殺できますが、給与所得や上場株式の譲渡益との損益通算はできません。
  • 損失を翌年に繰り越せない|株式なら3年間繰り越せる損失が、暗号資産では繰り越せません。大きく下げた年の損失は、翌年に大きく回復しても救済されません。年をまたぐと相殺の機会が消えるという点は、年末の判断に直接影響します。

暗号資産の年ごとの値動きの荒さは年別リターンの表で確認できます。60%下げた翌年に大きく戻すという展開が実際に何度も起きていることを踏まえると、この制度上の非対称性の重さがわかります。

これから変わること:20%の申告分離課税へ

2025年12月19日に公表された2026年度税制改正大綱で、一定の暗号資産の取引で生じた利益について、20%(所得税15%+住民税5%、復興特別所得税を含めると20.315%)の申告分離課税へ移行する方針が示されました。あわせて、損益通算と3年間の繰越控除も認める方向とされています。

ただし、重要な留保がいくつかあります。

  • 適用は2028年からと見込まれています。2026年や2027年分の申告が自動的に20%になるわけではありません。
  • 大綱は方針であって、確定した制度ではありません。実際に適用されるには法改正が必要で、対象範囲や条件は今後の法案で確定します。
  • 対象は「特定暗号資産」に限定される見込みです。金融商品取引業者の登録簿に登録された事業者が取り扱う銘柄が対象とされており、すべての暗号資産・すべての取引が一律に20%になるとは限りません。

したがって、いま持っている含み益をどうするかを「2028年に20%になるから待つ」という前提だけで決めるのは危険です。制度が確定するまでの間、条件が変わる可能性を織り込んでおく必要があります。最新の情報は国税庁および金融庁の公表資料で確認してください。

確定申告の流れ

  1. 取引履歴を集める|各取引所の年間取引報告書とCSV、ウォレットの記録。使った取引所を1つでも忘れると計算が合いません。
  2. 年間の損益を計算する|総平均法で取得価額を求め、売却・交換・決済・報酬取得のすべてを集計します。
  3. 必要経費を整理する|取引手数料、送付手数料、損益計算ツールの利用料など、その取引のために直接かかった費用です。取引に使ったパソコンなどは、事業として行っている場合を除き、按分の考え方が必要になります。
  4. 申告書に記入する|雑所得(その他)として記入します。国税庁の確定申告書等作成コーナーには暗号資産用の計算書も用意されています。
  5. 3月15日までに提出・納付|期限は原則として翌年3月15日です。

納税は円で行うため、年末に利益が出ていると分かったら、納税分の円を確保しておくことを強く勧めます。年明けに相場が下がって、税金を払うために安値で売る——というのは、雑所得・繰越控除なしの制度で最も避けたい展開です。

よくある質問

持っているだけで税金はかかりますか?

かかりません。含み益に課税されることはなく、売却・交換・決済・報酬取得のいずれかがあった時点で計算対象になります。

ビットコインでイーサリアムを買った場合はどうなりますか?

課税対象です。ビットコインを時価で売却してイーサリアムを買ったものとして扱われます。円に戻していなくても同じです。

海外取引所を使っていれば申告は不要ですか?

不要にはなりません。日本の居住者であれば、どこの取引所で得た利益でも課税対象です。国税庁は取引所への情報照会を行う権限を持っており、また各国の当局間で口座情報を交換する枠組みも整備が進んでいます。

損失が出た年は何かできますか?

同じ年の雑所得内であれば相殺できます。ただし給与所得との損益通算や翌年への繰越はできません。だからこそ、同じ年のうちに利益と損失を整理する意味があります(それが有利かどうかは相場観の問題であり、当サイトは助言できません)。

20%の分離課税はいつから使えますか?

2026年度税制改正大綱で示された方針では2028年からと見込まれていますが、法改正を経て確定します。適用時期・対象範囲は変わる可能性があるため、確定情報は国税庁と金融庁の公表資料でご確認ください。