暗号資産の「20万円ルール」で誤解されていること|住民税は別
「暗号資産の利益が20万円以下なら申告しなくていい」という説明をよく見ます。これは半分だけ正しく、半分は間違っています。正確には、所得税の確定申告が不要になる場合があるだけで、住民税の申告義務は消えません。この違いを知らずに何もしなかった結果、後から市区町村から連絡が来るケースがあります。
以下は2026年7月時点の制度にもとづく整理です。金額が大きい場合や、事業所得との区分が微妙な場合は税理士に確認してください。
そもそも何のルールなのか
給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる人は、給与以外の所得の合計が20万円以下であれば所得税の確定申告をしなくてよい、という規定があります。暗号資産の利益は原則として雑所得なので、この「給与以外の所得」に含まれます。だから「20万円」という数字が出てくるわけです。
ここで注意すべき点が3つあります。
- 20万円は利益(所得)で、売却額ではありません。50万円で売って45万円で買っていたなら、所得は5万円です。取得価額を差し引いた後の数字で判断します。
- 暗号資産だけの話ではありません。副業の原稿料、アフィリエイト、他の雑所得と合算して20万円です。暗号資産で15万円、副業で10万円なら合計25万円で、対象外になります。
- そもそも確定申告をする人には適用されません。医療費控除や住宅ローン控除の初年度、ふるさと納税をワンストップ特例を使わずに申告する場合など、何らかの理由で確定申告をするなら、20万円以下の雑所得も申告書に含める必要があります。
住民税は別の制度です
ここが最大の誤解です。20万円以下で申告不要になるのは所得税の話で、住民税にこの規定はありません。所得税の確定申告をしない場合、住民税については市区町村へ申告する必要があります。
所得税の確定申告をすればその情報が市区町村に回るため、住民税の申告は別途不要になります。つまり実務上の選択は次の2つです。
- 確定申告をする(所得税と住民税がまとめて処理される)
- 確定申告をせず、住民税の申告だけを市区町村に行う
「20万円以下だから何もしない」は、このどちらでもありません。手続きの手間で言えば、確定申告をしてしまうほうが結果的に簡単な場合も多くあります。
取引所は税務署に情報を出しているのか
国内の登録業者は法定調書や税務当局からの照会に対応する立場にあり、口座の情報が完全に見えない状態にあるとは考えないほうが安全です。ブロックチェーン上の取引履歴は永久に残り、本人確認を経た口座と紐づいています。「少額だからわからない」という前提で判断するのは、リスクの取り方として合理的ではありません。
20万円以下でも記録は残しておく
今年は20万円以下でも、来年の申告で今年の取得価額が必要になります。取得価額は買った時点の記録がないと計算できず、後から集めるのは想像以上に大変です。
- 国内取引所の年間取引報告書は毎年ダウンロードして保存する
- 海外取引所やDEXの履歴は自分でCSVを落として保存する(サービスが終了すると取り出せません)
- ステーキング報酬は受領日と受領時の時価を記録する
誤解されやすい他の点
円に戻していないから課税されない——されます。ビットコインでイーサリアムを買った時点で、ビットコインの譲渡損益が確定します。この誤解がいちばん金額に響きます。
損失なら申告しなくていい——所得税の観点では、雑所得の損失は他の所得と損益通算できず、翌年に繰り越せません。申告しても税額は減りませんが、複数の暗号資産取引の利益と損失は雑所得内で相殺できます。1つの取引所で損失、別の取引所で利益が出ているなら、合算した後の数字で判断してください。
2026年度税制改正大綱で20%になったから安心——大綱は方針であって成立した制度ではなく、適用は2028年からと見込まれています。いま申告するのは現行の雑所得の扱いです。詳細は税金と確定申告のページにまとめています。
よくある質問
会社に副業や暗号資産の利益を知られたくありません。
住民税の徴収方法を「普通徴収」(自分で納付)にできる場合があります。市区町村の運用によって異なるため、申告の際に窓口で確認してください。なお、申告しないという選択は、この目的のための手段になりません。
20万円の判定は税引き前ですか。
売却額から取得価額と必要経費を引いた金額です。取引手数料は必要経費に含められます。
学生や扶養に入っている人はどうなりますか。
基準が異なります。扶養の判定は合計所得金額で行われるため、20万円という数字とは別の話になります。扶養から外れると世帯全体の税負担が変わるため、金額が大きい場合は事前に確認してください。
この記事の内容は税務アドバイスですか。
いいえ。2026年7月時点の制度についての一般的な整理です。個別の判断は国税庁のタックスアンサーNo.1524と「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」を確認し、税理士に相談してください。
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